お気に入りのタンタン麺がある。
自分がここで勤務をする前に、一度家族で立ち寄って食べたタンタン麺。
辛すぎず、タマネギの甘みがあってとても、おいしくて忘れられなかった。
働くようになって、ひょんなことから、お店のお母さんと仲良くなった。
定期的に、実習に来る学生や研修医を連れて、食べに行くと笑顔でいつも話しかけてくれた。
ある日の2日前。いつもと同じように食べに行き、「久しぶりだねー。元気にしてた?」って声をかけてくださり、「お母さんも元気にしてそうだねー。」って。
坦々麺も美味しいのですが、カツ煮が最高に美味しいんです。
「また、よろしくお願いします!」って、さよならした2日後、腹痛で救急搬送されて、重症で集約的治療が必要と判断され、3次医療機関へ搬送となりました。
その後、本人も医療者もみんながんばったのですが、約2ヶ月ののち亡くなられました。
少し、耳が遠くて「ん?なんて?」って聞き返してくれるお母さん。
「ちょっとサービスね」っていって、お腹いっぱいにしてくれるお母さん。
おじさんにも、ご挨拶をしたくて、先日いつものように学生を連れてお店に伺った。
麺をゆでてるおじさんに
「ご挨拶遅れました。急なことで残念ですが・・・」となんて言っていいのかわからず、短いご挨拶と、深々と頭を下げるしか出来ませんでした。
「ほんとだよ。こんなことあるんかね。前日も元気にしてたんだよ。いろいろ掃除したりしてさ。なんだかよ…」
「ですよね。僕もその2日前にいつもと同じお母さんにお目にかかってましたし、元気だよー。夏は忙しくなるよねって話されていましたもん・・・ほんと、悲しいです。」
いつものタンタン麺とカツ煮。
変わらず、おいしい。たまねぎが甘くて、とろける。
学生たちも「めちゃくちゃおいしいです!」って。
お腹いっぱいになって、会計にむかったら、
「先生よ、うちのやつ、いつも先生のこと気に入ってたから、線香上げてやってくれ。喜ぶと思うからよ。」
って旦那さんから声をかけて頂いた。
お花に囲まれた、笑顔がすてきなお母さんの写真がありました。
最後のお別れしっかりさせてもらえたと同時にこれからも通いますよ!という挨拶が出来ました。
これも、地域医療なのかな。5年ここで働かせていただいて、医師−患者の関係だけでなく、日常生活の中で別の関係も築いている。お客−店主 利用者−サービス提供者 教えてもらう側−指導者 友人 友人家族etc
医療の提供だけでなく、そこで生活をしているかたがたとともに人生を歩む
お腹がよじれるぐらいに笑い合うことも、悲しい別れもある。
「いつもありがとうございます。また宜しくお願いします。」
って言えてよかった。