実習に来ていた医学生の子から、連絡をもらいました。

「無事に国家試験が終わりました。研修医として働き始めることになると思いますが、お薦めの本はありますか?以前うかがったときにいろいろと薦めていただいた記憶が・・・」

ということで、本人には直接御連絡したのですが、せっかくなので共有してみようと思います。

 
1.初期研修の2年間は、将来自分が何かに進もうと関係なくどの分野に関しても救急とコモンな病気についてはしっかりと学ぶこと(嫌がらないこと)

2.医学の基本は内科である
3.可能であれば、積極的に手技をする(その前にシュミレーション)

以上を踏まえて、以下にオススメの本を挙げていこうと思います。(あくまでも私見です。)

ハリソン内科学
  言わずと知れた内科の基礎。研修医一年目のときに、いろいろなマニュアル本(year noteも含めて)を捨てられて、外科のスタッフから
  「せめて、主要症候のところだけでも、しっかりと読め!原著を読め!」
 といわれました。
  でも、時間がない研修医の先生は、日本語訳のものでもいいと思います。
  今、医療界ではいろいろなマニュアル本など出ていますが、結局読んでみても立ち返るのは、「ハリソンに書いてあったやん」
 ということです。さらっと読めるものからでもいいんじゃない?という人もいると思います。確かにそれでもいいと思うのですが、そういう人で、「この人は凄い知識がしっかりしているな−!」と思う人は、しっかりと手当たり次第でもたくさんの膨大な参考書・教科書を読んでいるんですよね。その数あるマニュアル本やテキストにどこにでも書いてあることなど、共通する部分は大切なことだ!と自分で情報の取捨選択が出来ている人なんだと思います。
  医師12年目の私が今、ハリソンで振り返るときは、分野によっては、記述が足りないな(もっと詳しく知りたいのに・・・)という分野もありますし、知らなかったと思う分野もあります。ハリソンで下調べをしてからuptodateを使ったりして臨床をしています。
 一冊はしっかりと読むのがいいのではないかと思います。
①’できる救急外来~カルテを使えばうまくいく~
 研修医の先生達が、とっても勉強になる環境はやはり救急外来だと思います。診断がついていない「主訴」から考えていくステップをトレーニングしていかないといけません。
そこで、繰り返し繰り返し基礎(アプローチの仕方)を固めるのにとても役立つ本です。指導医が突っ込むようなところまでしっかりと記載されているため、指導医の立場も危ういです笑 ただし、これには、各病気の詳細については記載がないため、じっくり読む本は別に必要です。

バイタルサインからの臨床診断 改訂版〜豊富な症例演習で、病態を見抜く力がつく!
 バイタルってとても大切なんだ!とあらためて、感じた本です。わかりやすく解説されていますし、研修医の先生達が、上級医にコンサルトする際のkeyになるバイタルサインです。

感染症診療マニュアル
これも、青木眞先生のすばらしい本です。通読はなかなかできないですが、前半部分は「感染症かどうかを疑うときにどのように診察をするのか。何を指標として治療戦略を立てるのか?」といった感染症診療の基礎について書かれています。感染症はどの分野に進んでも必要な基本の知識ですのでぜひこれは持っていて欲しいです。

④感染症プラチナマニュアル
これは実践的に抗生剤をどのように使うかというときに、ポケットサイズで調べることができるので便利です。ただし、これだけで感染症のことが理解出来る!というわけにはいかないので、補助的としてオススメです。
感染症ケースファイル
これも、感染症関連ですが、グラム染色を自分で覗くクセを研修医の先生にはつけてもらいたいと思います。研修先によっては、そんなことしたことがないとか、できないとかあるかもしれませんが、感染症というからには、そこに「細菌」という敵がいるわけですから、見えるものはしっかり見て、抗生剤などの治療を進めてもらいたいです。その考え方や、実際の写真などがたくさんありますので、理解しやすいです。

⑥心電図の読み方パーフェクトマニュアル

 あわせて、ぜひ取り組んでもらいたいのはこれ
⑥’レジデントのためのこれだけ心電図
 とても読みやすいです。⑥を購入したのはもう9年ぐらい前の話。もっと良い本が出ているのではないかと、調べていたら、とても評価が高かったのがこの本。ぽちっと、購入して読んでみました。著者がおっしゃっているように、通読するのがとても読みやすいですし、臨床に即しているため無駄がない。入門書として心電図アレルギーが取れやすいと思います。

判読ER心電図Ⅰ
 英語版でやりましたが、日本語版のほうが安いので、こちらでも。心電図は、数をこなさないとわからないとよく言われますが、公文式のようにたくさん心電図がでてきますので、ぜひ解いて覚えましょう。

レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室[ベストティーチャーに教わる胸部X線の読み方考え方] 改訂第2版 
 胸部レントゲンの読み方については、これが一番わかり易かったです。例もよくわかりますし、平易な言葉で表現されていますので、ぜひ。

ジェネラリストのための内科外来マニュアル
 定期外来を持つようになってから、または、walk-in患者さんの鑑別で困ったらというときに便利にまとまっています。ワシントンマニュアルか、これか。という感じなぐらいいい本です。

⑨’初めての内科病棟 ただいま回診中!

  初期研修中に病棟で悩む症例、よく出くわす症例について記載があります。それだけではなく、患者さんへの立ち居振る舞いなど医師としての基本姿勢についても記載がありとても役に立つ本です。導入編として研修医の先生達にはもってこいの本だと思います!

Step Beyond Resident シリーズ

言わずとしれた、福井大学救急部教授林先生の本です。研修医のときには、上級医に負けたくないとワクワクしながら読んで、後期研修医以上になると、下からの突き上げに負けないように下調べするために読んだ思い出があります。

Dr竜馬の病態で考える人工呼吸管理
 呼吸器にまだ不慣れな人は、ぜひお勧めです。グラフィックについてもわかり易く書いています。僕のレクチャーもこの本を参考にさせてもらっているところがほとんどです。

カラー写真でみる!骨折・脱臼・捻挫―画像診断の進め方と整復・固定のコツ (ビジュアル基本手技 2)
今振り返っても、シンプルかつ、必要十分な整形外科の本。救急外来でよく出くわす外傷についてはとてもわかりやすく書いてあります。
プライマリケア整形外来マニュアル 原著第3版 ―外来で整形疾患をみるすべての人へ  

これも、とても秀逸です。初診外来で出くわすちょっと慢性期的な整形内科についてはとてもわかり易く書かれています。何よりも、治療方針を具体的に提示しているのがよい。
ネッター運動器疾患と解剖アトラス

解剖書を実際と照らし合わせながら、復習。整形疾患はこれに限ると思います。シンプルで見やすいのと、いろいろな疾患が表になって記載されているので使いやすいです。

まずは、こんなところでしょうか。
他の皆様のご意見もありましたら、ぜひ!