たまたま、医局の机にあった雑誌に
「キーワードで解く一番新しい’救急医療’」

というキーワードを見つけたので、読んでみました。
いろいろな先生が書かれているのを読んで、「お!なるほど!」と思うところや「んー、どうなのかな?」と感想はさまざまでした。

「今後、地域枠の医師がへき地、離島の救急医療を支えてくれると期待しているが、・・・」
「ICTのさらなる導入、搬送手段の進化などによって集約化が進むと考えられるへき地、離島の救急医療は、実際に減衰する方向に向かう可能性がある」

と記事がありました。
本当でしょうか。現場で働いている私の意見は、また異なります。

★「今後、地域枠の医師がへき地、離島の救急医療を支えてくれると期待しているが、・・・」
  現在、医学部受験をする学生が地域枠で入学するときに将来、離島、へき地でずっと働くために入学するとみんなイメージしているでしょうか。
→答えはNoです。
 医学部に入学するためであれば、どんな方法でも入学しやすい方法で入学したい!というのが本音だと思います。大学によって政策は様々ですが、地域枠入学をしたからといって必ずしも、総合診療専門医に進むわけでもありません。ある大学では、○○科へ入局したうえで、義務年限のプログラムをローテーションするというだけです。その中に、離島や僻地で必要な知識、技術の習得をするプログラムに特化しているというのは聞いたことがありません。外科に入局したら、外科系のローテーションで、医師不足のところに何年か御恩奉公で行くという程度。では、耳鼻科や眼科希望の子はどうするのでしょうか。実際にそのような学生も見てきました。
 ですので、「地域枠の学生が将来、へき地、離島の救急医療を支えてくれる」というのは、難しいと思うのです。そう願うのであれば、学生時代により現場を見せて、early exposureをさせることや、離島へき地で必要な知識、技術をプログラムとしてしっかり作成した上で現場に指導医がいる・または、教育病院でそのことを念頭にして指導することが出来る環境にしないことには、人の充足はできないと思っています。

★「ICTのさらなる導入、搬送手段の進化などによって集約化が進むと考えられるへき地、離島の救急医療は、実際に減衰する方向に向かう可能性がある」
 たしかに、人口推移でいけば、へき地、離島に住む人口は減少していきます。
ただし、ゼロにはなかなかなりません。また、人が住んでいる以上は軽症重症関係なく病気になることもありますし、外傷だって程度の差はあれ起こりえます。
搬送手段はたしかにドクターヘリやドクターカーなどが普及してきて、以前より搬送がスムーズになり、治療が間に合うケースも増えて来ていると思います。
 ICTはどうでしょうか。
へき地や離島でICTが活躍できる場面があるのでしょうか。画像診断は確かに助かりますので放射線科医がいないところで、きわどい診断のときには助かると思います。
 ただし、救急に限って言えば、脳出血や、くも膜下出血は画像も比較的わかり易いですし、何よりも患者さん自身の症状の訴えが強いはずです。
 また、重症外傷患者さんがいたとして、ICTで何が出来るでしょうか。現場に医師がいないと(または特殊な認定看護師制度を作ってでも)、胸腔ドレーンや挿管をすることはできないです。
 現状、ICTで今できることは、画像診断の手助けと、安定している慢性期疾患の患者さんへの処方、面談だと思います(身体所見をとらなくてもいいかもしれないもの限定)

以上が私の意見です。
 やはり、人口が少なくなったときに、限られた医療経済の中で継続した医療供給をするには、少人数の医師でその地域をカバーし、その全員が救急、内科、小児科、整形外科、産婦人科、耳鼻科、眼科などを地域で必要な知識をもつように教育する必要があると思います。そうすれば、医師もお互いに休みを取りながら、長くその地域に居続けやすい環境になるのではと思います。

現場で働きながら、微力ながらも国や大学で教育をされる方への情報発信をしたいです。

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