医師は不足しているのか?それとも過剰なのか?
 先日、人との待ち合わせで、丸の内にある丸善で時間を潰していました。
普段、本屋さんにゆっくりいけないことと、医学書や医学関連の書籍があるところにいけないため、嬉しくて5冊ほどまとめ買いをしてしまいました!

そこで出会った医師数から考える医療格差についてとてもまとまっている本を紹介します。以前私が現場で感じたことを書いた記事に内容が近く、「データからもやはりそうなんだ!」と裏付けされた気持ちで嬉しく思って読み進めました。

 このblogを読んで下さっているかたは、基本的には年齢が若い方であったり、病気をあまりしておらず病院利用をしていない方が多いと思います。

 巷で、「医学部人気がやばい!」と言って、世間をあおる雑誌が多数あり、それに便乗するかのように受験生を抱える親御さんは、医学部への入学を勧めている現状があります。

 果たして、今後の医師という職業は、メリットがあるのでしょうか?

 現在、毎年9419人の医学部生が生まれます。
18歳人口が118万人ですので単純に高校卒業生だけが受験をするとして、

130人に1

が医師という職業を選ぶ時代です。

現在10万人あたりの医師数は230人 

1000人に対して2.3人です。

諸外国に比べるとまだまだ全体数としても少ないといわれている日本です。

 日本の場合は、日本語を使っての診療になるため、諸外国から医師が入りにくいこともデメリットの一つといわれています。(英語圏では多国籍の医師がいます)
国が抱える今の医師偏在の問題は以下に集約されています。
 1.広域の市町村合併が進む前に、各市町村が乱立させた公立病院の機能が崩壊し、維持できず毎年の赤字運営である その病院で医師不足である
 2.250床以上の病院では逆に医師数は増えている
 3.150床以下の病院では医師数が減っている。医師の高齢化が進んでいる

 4.今まで、専門科として高度な知識や技術を持った医師が地域病院で働こうとしても、専門的なことに関しては良くても、専門外のこともやらないといけない現状の中で、なかなか自分のスキルをうまく発揮できない。縦割りではないCommon diseaseを上手にマネージメントする医師の養成ができてこなかった。

これに対して、国として対策を立てていますが、これにも問題があります。

・医師が戦力として一人前になるには卒後10年程度の年月がかかる
・医学部が6年間で卒業ということも考えると15年先を見据えて、医学部の定員数の調整を行う必要がある
・医師を育てるには国税がとてもかかる(これを個人負担とすると、親の収入格差がどんどんと広がり、親の所得が低い子供に医師になるチャンスはどんどん減っていきます)
・日本の人口動態を加味して、医師数の増減を行う必要がある
 同時に、今までは人口10万人あたりの医師数という数値をもって医師が足りているのか、そうではないのかと見てきたが、この指標自体が現実の問題を表す指標として良くない。

 具体的には、さらに細かい医療圏内での医師数であったり、医療圏間移動をする患者数の割合(東京などの大都市近郊の医療圏など)、診療科ごとの医師数:患者数といった、ミクロな視点での医師数の評価が必要とされています。
☆単純に医師を増やすとどうなるのか?
人気のある学部(医学部やかつての法学部・歯学部・薬学部)は大学にとってもメリットなので、新設したくなるが、その後、薬学部や法科大学院のように、卒業はしたが、国家資格が取れず、大学としての人気が下がる→経営困難→学部自体の人気の低迷につながる。ひいては、質の担保についても疑問視されるようになる。
今後国が取っていかないといけない方針の一つとして以下のことが挙げられています。
 
 医療機関の集約化
 それに呼応するように、地域で働く総合診療医の育成
 医師の仕事のタスクシフティング(AIも含む)
これらがうまくいかないと、医師がどんどんと増産されるだけで、過酷な業務は変わらず、医師というライセンスの価値も当然下がり、平均年収は都市部においては当然下がってくる可能性がある。

 都市部で生活をしながら、仕事をする
そのほうが収入も上がる

 このような一般的な会社の理論は医師に関しては成り立ちません。
地域のライフラインを守るため、地域(田舎)のほうが当然収入は安定するでしょう。

 では、果たして地域(田舎)に積極的に働きに出たいでしょうか。

そこまで考えて、「医師」という職業を選ぶべきです。

 本当に「医師」という職業に興味を持って学部に入らないと6年間潰しのきかない学生生活を送ることとなり、働いてからも「こんなはずではなかった」後悔するばかりになってしまいます。そして、その一番の被害は患者へとつながります。

 医学部への入学を考えている受験者の皆様・御家族様は今一度しっかりと話し合いをしてみて下さい。
医師偏在問題に話を戻して、
上記のことは、実際に地域で働いていて、感じる現実にfitしています。
・田舎に好んで住みたいと思う人は少数派であること
・家族・子供の教育環境のことを考えるとさらに少数派であること
・教育環境の整っていない地方病院に出たくない医師が多い
・症例数がものをいう専門医資格を取るために手術件数が必要な診療科に進む医師にとって症例の少ない地域中小規模病院で働くことにメリットは少ない
・中小規模病院の医師の高齢化が進んでいる
・専門分野に特化して医療を学んできた医師は地域小規模病院では働き方を変えないと(今までのキャリアとは異なる)うまく働けない
逆に
 ・地元出身者は、本当の地元ではなくとも同じ県内で働くことが多い
 ・若い頃に働いたことがある病院に再度勤務することがある(縁がある病院)
 ・教育環境が整っている病院では地域の病院でも医師が集まっている
 ・地域病院であっても、勤務時間をやりくりすると家族の時間・プライベートの時間もしっかり取れる
一言で「医師」と言っても、いろいろな仕事内容があります。内科・小児科・外科といった大きなくくりだけでは今は言えません。循環器内科・消化器内科・呼吸器内科・小児血液科・新生児科・消化器外科・呼吸器外科・心臓血管外科etc

「医師不足」と言っても、どこに足りないのか。どのような仕事をカバー出来ていないのか。ミクロに考える視点をもっていることはこれから10年先を見据える上でとても大切だとあらためて考えさせられます。

 普段病院を利用しない方こそ、想像して下さい。自分が病院にかかり出す年齢、どんな病気や体調、怪我で病院を利用しそうか。自分の親が病気になったとき、入院が必要となったとき、自分が住む身近な地域にアクセスのよい病院にあって欲しい機能はなんなのか。疲れ切った医師に診察を任せていいのか?医師だけでなく看護師や検査技師など医療者全体の問題です。航空会社のパイロットなどの勤務と比べてみて下さい。

 

 

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