スピノザの続編

後輩から「先生!でてますよ!」と本屋からの写真が送られてきました。見覚えのある作風の表紙。「スピノザの診察室」の続編。片田舎には本屋はない。早速その瞬間にピッ。サイトを見ると、ん?予約?9月29日発売?明日なの?

 と思ったら、翌日、ちゃんと発売日当日に病院に到着しました。さすが、東京に近く、離島ではないこの地ならではの早さ。タイミング良く、何も予定のない1日がありました。

 じっくり読みたいから、いつ読もうかなっと誕生日プレゼントを楽しみに開けるような気持ちでその日を待ち、読み始めました。そして、また途中で涙しながら、読み終えました。前回のストーリーを思い出しながら、今回も、救急対応、病棟、訪問診療、そして大学医局との関係を医療者(かつ、中小規模病院勤務)ならではの近さで読み進めました。

 自分には、マチ先生ほどの特筆すべき医学的技術はありませんし、医局というところに属したことがないので医局人事やそのトップにある教授というものに対して鈍感です。全く同じ立場ではありませんが、やはり重なるところが多いように感じてしまいます。都市部ではないですが、その地域になくてはならない中小規模病院で臨床を続ける。高齢者医療。治療介入すべきかどうかも毎回悩む。死にゆく方を地元で最期まで見届ける。時には自宅で見届ける。ただ寄り添っているだけのときもある。本当に寄り添えているのかなと自問自答し続けている。

 目の前の患者さんが幸せに今を生きること

これを1番に考えて日々向き合っています。

「どんな患者さんにも、自信を持って声をかけたいと思っているだけだよ。『大丈夫だ、心配するな』とね。相手がこれから治療する患者であっても、これから看取る患者であっても、それは同じだ。同じでありたいというのが私の考え方だ」

 自分の患者さんとの向き合い方を明文化できていなかったことをすっと代わりに言ってくれたような気がしました。本当に夏川さんありがとうございます。

 「神様のカルテ」シリーズから、今回の作品まで、イチとマチ先生は別の人物ですが、医師が成長していく中での葛藤や、キャリア、家族との向き合い方、社会への貢献との向き合い方、変化していっているのをとても感じます。根底にあるのは「患者さんを幸せにすること」 純粋にそれを全うし続けていく主人公に惹かれるのでしょう。

 その他、諸々今の医療の問題のことや、京都の町並みのことなど沢山共有したいことはあるのですが、ネタバレになるのでぜひ、一読を。本当にこの作品を通じて教授クラスの先生方も、医局人事で頭を悩ましている先生方も、研究のことで悶々としている先生方も、市中病院で目の前の患者さんのことで頭がいっぱいになっている先生も、お役人の方も、病院に通院されている方も、病院にはまだほとんどかかっていない方も、想像力を豊かにして今の日本の医療について考えてもらいたいと思います。そして、どうやったら今の体制で少しでもみなさんが今という瞬間を快楽ではなく幸せだと感じて過ごせる世界が作れるかを考えていきたいです。

 そして改めて、自分は小説やドラマ、映画などもなんだかんだで医療系のものを好き好んで読んだり観たりしてしまっていることに気づきました。休みの時まで、仕事関連の作品に触れるなんて。客観的に本当に「医療を通じて社会と向き合う」ことが好きなんだろうなと。世界が狭いのかもしれませんが、でも好きなんだろうなと。興味があるという言葉で変えてもいいのかもしれませんが、好きなんでしょう。天職だと思っています。前にも書いたかもしれませんが、好きなことを仕事にできて、好きなことをさせてもらっている。さらにそれで生活ができている。こんな幸せなことがあるのかなと。

 毎日のことに追われて、そのことを少し忘れていたような気にもなりました。毎日の幸せに感謝して、また明日から頑張ろうと思いました。

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