1つの病院でずっと働くことで経験することの1つ。長い定期外来での人とのつながり。ご自身のことも少しずつ変わっていきます。体調も当然。また、考え方、死生観も。そして、家族関係も少しずつ変化していきます。長い付き合いののちにお別れをします。そのようなときは、御家族と笑顔でご本人を送れてるかな?と考えます。そうなったら幸せだなって。
 その方と出会ったのは約1年前。紹介状を持って、御家族と外来に来られました。手紙の内容は、
「予後1年程度。ご本人は治療を望んでいない。地元の病院でフォローお願いします。」
お顔を見ても、とても素敵な笑顔で、症状も何もない。専門医の先生からのお手紙を見ながら、「本当に治療をしないのですか?」と伺うと、「はい。もういいんです。診てくれますか?」

  「わかりました。最期まで診させてもらいます」

こうやって、初めから終わりが予想される形でその方との関係が始まりました。1ヶ月に一度お会いして、「どうですか?」と尋ねる。
 「何も変わらないよ。子供たちと旅行行ってきました。」
 「この歳になってサーフィンレッスン行ってきました。」
  そうやって、御家族との時間を大切に過ごしてもらって、私はただただ聞くだけ。特にお薬を出すこともほとんどなし。

 笑顔で話されるのをただ聞くだけ。そうやって、半年ほど過ぎたぐらいから、症状が出てきました。

 苦しくないように、痛くないように。私が出来るのはクスリの調整のみ。これぐらい。最期を家で過ごしたいのか、病院でいいのか。これも何度か話をしましたが、その気持ちも変わらないようで。定期外来の期間を少しずつ短くしながら、「どうですか?」と。

 亡くなられた後に、御家族から感謝の言葉をいただきました。

「あの人らしくて良かったんだと思います。そして、本当に病院が嫌いで通院自体今まであまりできる人ではなかったんです。それが、先生と会って、毎回病院に来るの楽しみにしてたんですよ。ちゃんと来てたでしょ?本当にありがとうございました。」

 笑顔で御家族と挨拶が出来ました。そして、ほとんど何もしていない、ただ伴走しただけなんですが、これも医師の仕事なんだと改めて感じました。救急をやっているだけでは感じることが出来なかった経験と感情。むしろその言葉に感謝したいと思います。

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