搬送時間について今日のまとめはまずこちら
・患者受診から、方針決定までは2時間以内で決めること
・「腹痛」を主訴に受診した患者は方針決定に時間がかかる
・CTの閾値を下げても良いのは「突然発症」「裂けた・つまった・破れた」
というヒストリーを問診からちゃんと聞いてから
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| 研修医の先生と |
患者さんが受診してから、診断がつくまでの時間を意識することは、とても大切です。
患者さんを適したタイミングで適した医療機関へ送ることや、院内でも適した診療科へ相談することで必要な治療を早期に提供することが出来るからです。
ただし、いろいろな主訴で来られる患者さんがいる中で、
順序立てて診察→診断→治療
といかないのが、救急外来。
まずは、
「2時間以内に方針(disposition)を決めること」
これを意識して下さい。
だからといって、2時間かかってもいいというわけではない。
その中でも、早くできるものは、早くする必要がある。
何がファクターとなるか。時間軸で考えてみます。
設定として、CT検査が出来るかどうかでこの時間軸は大きく変わることをご理解下さい。
ですので、診療所で対応する際には、別のストラテジーが必要かもしれません。
では、実際に考えていましょう。
いろいろな主訴があります。
①頭痛
②胸痛
③腹痛
④背部痛
意識障害・嘔吐・倦怠感・外傷etc
まだまだ色々ありますが、緊急性を要する主訴は、①-④+血管損傷を伴う外傷でしょう。今回は外傷は取り上げません。
一つ一つ考えていきます。
①頭痛
緊急を要する疾患・・・くも膜下出血・脳梗塞・脳出血・髄膜炎・脳炎
意識障害だけでは、AIUEOTIPSなどを利用して頭蓋内疾患以外の病気も考えることになりますが、「急に(sudden onset)」「人生で経験したことがないぐらいの」といった、ヒストリーと「神経症状を伴う頭痛」といった場合には、上記疾患を除外するために、以下の手順で診療をしていくことになると思います。
vital 測定+問診+診察→ほぼ同時進行で、点滴+採血→頭部CT
この時点で、くも膜下出血、脳出血は診断がつくまたは、除外が可能でしょう。
(診察開始から、約20分~30以内)
その次にCTで出血が認められない場合に、神経学的所見が伴う場合は、MRIにそのまま向かうことが多いでしょう(可能な施設であれば)
DWI撮影が終わるまでには+20分程度。
来院してから遅くとも40分~50分で診断がつきます。
脳炎もMRIで診断がつくことが多いでしょう。
この中で、髄膜炎が一番時間がかかると思いますが、最初から強く疑うヒストリーがあるか、先に採血をとったりしていれば、CT撮影が終わって間もなくで採血結果が出ていると思います。感染があると考えて、腰椎穿刺をすれば、それでも1時間半で診断までいきつくでしょう。
②胸痛
緊急を要する疾患・・・
ACS(心筋梗塞・狭心症) 大動脈解離・大動脈瘤破裂 気胸 肺塞栓 縦隔気腫
ここでも、「急に(sudden onset)」「今までで一番の痛み」というワードを聞いた場合、または、血管系riskが高い場合には、急いで対応をしていきましょう。
以下の手順で診療をしていくと思います。
vital測定+問診しながら、ECG→点滴+採血+心エコーを同時に
→必要時胸部レントゲンや胸部CT
ECGの時点で診断がつきやすいものはACSでしょう。ここでわかってしまえば、診察開始から5-10分で診断。
点滴をしているときに、心エコーをして、壁運動や可能であれば、起始部の大動脈弓の観察が出来れば更に診断に近づくと思います。気胸に関しても、vital上疑う場合(SPO2低下や呼吸回数増加)は、エコーで診断に近づくことが出来るでしょう。
先ほどの緊急性を意識したようなワードが問診上聞き取ることが出来ていて、心電図上ACSが疑えない場合、なるべく早期に単純CTまで撮りましょう。この時点で、大動脈解離は診断が可能でしょう。単純で疑われるようであれば、造影CTをその時点で追加する。その時点で、肺塞栓や縦隔気腫も診断が可能と考えます。
これでも、total30~40分以内だと思います。
採血結果を待てるぐらいのvital安定患者であれば、結果を待って、造影CTをしたとしても2時間以内に診断までたどり着くことは出来そうです。
③腹痛 は後回し(ちょっと長くなるので)
④背部痛
緊急を要する疾患・・・大動脈解離>>急性膵炎 腎梗塞 尿管結石 椎体圧迫骨折
背部痛で何よりも見逃してはいけないのは大動脈解離ですが、なかなか典型的な痛みで来ることはないです。それでも、いつも考えておかなければなりません。「いつもの尿管結石かなー。大きさを見て、泌尿器科への受診を急ぐかどうか見よう。」とCTを撮ってることが多いと思いますが、必ず血管の走行、解離の有無を注意して見ておきましょう。特に「正中が痛い」「外傷歴がない突然発症」はあやしいはずです。
これも、CTまで行うことに抵抗はないですし、文句を言われることもないと思います。
点滴を取るとしても、CT撮影が終わるまでにだいたい20分程度で終わるでしょう。
大本命
③腹痛
緊急を要する疾患・・・
大動脈瘤破裂 大動脈解離 SMA閉塞 腸管穿孔 肝破裂 子宮外妊娠
>>小腸閉塞 S状結腸捻転 卵巣捻転 虫垂炎 虚血性腸炎 憩室炎 IgA血管炎
さて、解剖を考えても臓器が多いため、鑑別は多岐にわたります。それでも、緊急疾患となるものは「血管系」+「破裂した・つまった・裂けた」です。
ここでも、突然発症を疑うヒストリーをつかんだ場合は、CTまでの閾値は下げざるをえないと考えます。診療の流れは、以下のようになると思います。
vital測定+問診→エコー→点滴+採血→CT検査
エコーで、腹腔内出血を疑うような所見が認められる場合には、大動脈瘤破裂、子宮外妊娠、肝破裂などを考えるため、急ぎながら、造影CTまで。
小腸拡張を認める場合や、大腸の壁肥厚などが認めるとなると、それぞれ腸閉塞を疑ったり、病歴にあわせた虚血性腸炎や憩室炎などを鑑別に挙げていきます。
急がないようであれば採血まで待って、CT検査となるでしょうか。
いずれにせよ、血管系を疑う場合には、エコー検査がkeyになり、採血結果を待たずしてCT検査までおこなうことが多いですし、CTを撮ること自体に批判をもらうことでもないと思います。
ただし、「腹痛」を主訴に来られる患者さんは、程度が様々であったり血管系ではない疾患が多いため、CTまですぐ撮ろうかどうか?と悩むケースが多いのだと思います。
それは当然でもあると思います。無駄な検査はする必要はないと思うので。そのようなときに、採血もするかどうか悩むと思います。上記疾患を鑑別しようとする際に役に立つのは、肝酵素や、AMY上昇、解離などを疑う場合のDダイマーぐらいでしょうか。おそらくそれ以外の採血項目の異常で緊急に腹部CTを撮らないと診断が難しい、診断がぶれるといった症例はないと思います。まれに、悪性リンパ腫や悪性腫瘍などが見つかることはありますが、たいてい緊急性は高くないはずです。
そうするとやはり、採血結果を待ってから造影CTをするとなったとして、2時間以内の診断がついて方針が決定するはずです。
以上が、「2時間以内にdispositionを決定する」理由です。
ただし、CT検査までの閾値が高いとか、無駄に検査をしていないか?という意見もあると思います。そうならないためにもそれぞれの疾患に対して、特徴的な病歴やrisk、身体所見をしっかりと勉強することは大前提です。結果的にCTまで撮らないと診断がつかないということは多いです。(救急で診断をしたが、入院を受けてくれる他科の医師からCTなんで撮ってないの?と聞かれることも現状多いです。これに関しては、救急の段階でCTは不要と判断したのであればその時点でコンサルトをすることは問題ないと思っています。コンサルトをした段階で、受けた側の医師が必要と判断したら、そこで検査を追加すればいいと思います。)
一番大切なことは、「患者を救うこと」です。
早く診断をつけることでもなく、搬送先を早く決めることではないと思います。
重症な疾患を見落とすことがないように、強く疑うヒストリーや身体所見がある場合は、オーバーな検査となっても仕方がないところはあると思います。後から振り返って、同じような患者さんが来られても同様の方法しか出来ないと振り返ることが出来れば、それは仕方がない診療の流れだと思います。たとえ、診断に直結しなくても。
逆に、検査を少なくしていて、見落としが一例でもあった場合、「稀なケースだから仕方がなかった」ということはスマートではないと思います。もし、自分の家族や大切な人がその一例にあたってしまったら、本当に納得がいきますか。
