昨夜、テレビ東京の「ガイアの夜明け」を見ました。

「命の現場」が危ない①
 働きすぎ・・・医師を救え

とあったので、めずらしく興味を持ってTVをつけました。
(最近、ほんとにテレビを見なくなりました。サッカーを見るぐらいでしょうか。その他は、だいたいYoutube観てます・・・)

確かに、現状と言えば現状なのですが、その打開策として、院外でも対応出来るアプリの紹介に半分ぐらい時間が割かれていて焦点がずれてしまったことにとてもがっかりしました。

確かに番組の主旨としては、
 ①今の医療を継続するためには、医師の仕事量を減らすことができない
 ②だが、医師も疲弊しており、医師がいろいろなものを犠牲にした上で成り立っているシステムである

となっていました。途中出てこられた本田先生。松前にも来られてお会いしたことがある人だったので、びっくりしましたが、確かに、先進国と比較しても日本は医師不足といわれています。絶対数も確かに足りないのかもしれません。

 ですが、他の国(アメリカやオーストラリア)のように、医師の専門性に関しては行政の厳しい定数配置を同時にしていかないと、医師数をただ増やす(入学者定員を増数または、大学を増やす)だけでは、医師の偏在問題は解決できないと思います。

 ①に関して、異論はいろいろとあると思いますが、病院の配置に問題があると思います。京都府立医科大学救急部教授の太田先生が以前から言われていますが、医師の集約化・病院機能の集約化を進めていくことがとても大切だとわたしも思います。
 特に、循環器内科・脳外科・心臓血管外科といわれるような急変しやすく、手術後の管理もとても重要な専門医は地方で2人とか3人で24時間365日の体制でやるべきではないと思います。患者さんへの治療アウトカムが落ちると思います。それよりは、10〜20万人規模に一つの集約化されたセンターを作り、そこに一つの科で10人以上のスタッフがいることで、緊急にも予定手術にも耐えられるシステムを作ることが大切です。また、医師だけでなく看護師やMEさんなどその他のスタッフにも技量が求められます。そのようなスタッフも一つに集約化するほうが、病院としても地域としてもメリットがあります。
 
 では、集約化されたあとの、へき地や地方地域はどうするのか?

ということですが、ここにこそ、総合診療科(総合診療の能力のある医師)を複数人配置することで、救急疾患の対応(初期対応+搬送のジャッジ)・その地域で完結すべき疾患の入院対応・慢性期外来・訪問診療などをするべきだと思います。そうすることで、広い範囲で診療が出来る医師のチームがあることで、お互いに休みも取りやすくなりますし、緊急疾患や、重症化しうる疾患については、センターへ搬送をするという体制にすることで、自分たちが診ていくべき疾患がある程度決まってきます。例えば、感染症や心不全、手術適応のない整形疾患(腰椎圧迫骨折など)。それを、「退屈だ」「おもしろくない」といってしまう医師もいるかもしれませんが、そういう医師は、集約化されたセンターで勤務してもらい、自分たちの専門性を十分に活かしてもらうほうが、患者にとっても、医師にとっても良いことだと思います。
 あわせて、搬送方法の充実を今以上にしっかりと整備する必要があると思います。

ドクターヘリの要請の敷居を低くする(アンダートリアージの容認・病院間搬送の利用を増やすことも)
離島からも、搬送がしやすくなるような夜間でも運用できるドクターヘリの導入も考慮
(自衛隊の防災ヘリだけではなく)

 医師の話に戻りますが、集約化を進めていくためには、集約化の対極にある地域で必要とされる医師像が以下のように明確化できてくるはずです。

 「救急対応がしっかりできる、
内科だけではない地域で必要とされる総合診療能力をもった(教育を受けた)医師」

ということになると考えます。
 この信念に基づいて、自分がまず実践する。既存のシステムの中でカメレオンのように形を現状にfitさせながら、来るべき未来に備える。そのための仲間作り、ネットワーク作りをしているところです。国、行政など大きな力を持った人達も含めて、同じように考えている人はいろいろなところにおられると思うのですがどうでしょうか。

②については、その通りで、医師が家族や自分たちの時間を犠牲にすることで成り立っているシステム(というか、そもそもそのような状態をシステムとしてみなしていいかも疑問ですが。)だと思います。
 LINEのようなアプリを導入して、自宅で待機しながら、当直医から画像が送られて、画像を自宅で見ることが出来ても、診断はしやすいかもしれませんが、結局手術が必要と判断したときには、病院へ行くことになります。手術・その後の術後管理を少人数でやることには変わりはありません。根本的解決策にはなり得ないのです。
 むしろ、大学の医局やそれぞれの大きな病院グループがあるのであれば、それを利用して各病院内の医師という枠組みを超えて当番制にして画像対応(相談係)をすれば、オンコールになる回数も減ります。
 というか、手術をする病院を集約化することで大人数で地域を守るほうがよっぽどQualityが高いと思います。と同時に、画像システム、採血結果などの結果を見るシステムについては、オーストラリアのように、行政と医師会主導で情報管理のセキュリティを高めた上で、どこの医師でも患者情報が見られるようにしておけば(単一のシステムで。オンラインで。)、その地域の核となる病院の医師と地域の病院で働くrural generalistが無駄な手紙のやりとり(診療情報提供書)もしなくてすみますし、まるで院内の医師にコンサルトをしているかのようにデータを見ながら話ができます。

各病院がそれぞれ頑張る
のではなく、ひとつの地域が一つになって、役割分担をしっかりと明確に確認すること
そこに、医師の適した配置を行うことが医師の働き方を変えながら、医療の質を落としにくい方法として一番reasonableと考えます。

医療者だけでなく、皆様も考えてみて下さい。

 

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