先週、初熊本してきました。朝のプライマリケアカンファレンス繋がりや、昨年の地方創生医師団の講演などいろいろな繋がりがあって、今回呼んでいただきました。

 自治医大を知らない方もおられると思いますが、40年程前に日本に医師が足りていないということ,特に地方に医師が足りていないということで、各県毎年2~3名の入学者をだし、学費を県が持ち、卒業後9年間の義務年限の中で、地域で働く医師を増やすという目的で作られた医学部です。

大学については、「自治医大をもうひとつ創る」を参照してみてください。とっても、わかりやすいと思います。

 今回いただいたお題はこれ。

地域医療を軸に働いている身としては、光栄でしかないですよね。しかも、私は2浪目のときに自治医大受験して最終選考まで残ったもののご縁がなかった身ですので、尚のこと。
 何を話せばいいのか?何に興味を持っていただけるのか?といろいろずっと考えていました。自治医大の先生方の中に、義務年限が何か鎖のようでnegativeな9年間と捕らえておられる印象があります。たしかに、一般入試で大学に入った医師とは卒後9年間の働く場所を自分の意思でなかなか決められないというのはあります。また、県外への学びに関しても1年間だけと少なかったりすることも医師としての成長の過程で環境を求める上で制約がかかったりもします。

 でも、私が今まで離島や僻地で出会った自治医大出身の先生たるや、○○科とか関係なくとても優秀で大体のことが出来てしまう先生がたくさんおられました。環境を自由に選べるから優位であるとか、関係ないのでは?とも思いました。

 そもそも、私自身の意見としては以下のようにまとめます。

1.地域医療に興味がないのであれば、そもそも自治医大を受験してはならない。

2.学費が免除になるというメリットと引き換えに9年間の県内義務があることは入学前からわかっていることなので文句は言ってはならない。

この2点を前提に、「それでも、卒業後のデメリットがあるのではないか?」と不安に思っておられる自治医大の先生方に対して以下のようにお伝えしました。

1.学生時代から、地域医療についての刷り込み(いい意味での洗脳)(early expose)があり、考えるきっかけがあるのは優位な点

2.専門医資格については、少し早く取ったところで実臨床をする上では特に変わりはない。(特に日本人は遅れることをとても気にするが、私自身3浪して、特に気にしなくなった。さらに、救急専門医試験も一度落ちてますし・・・)

3.むしろ、general な診療や視点をもっている医師のほうが、その後の成長率は間違いなく高い。

4.義務年限の早い段階で、地域の病院を経験することで、その地域の高次医療機関が担う医療の大切さや受け入れる際の敷居の低さが大切であることを知ることが出来る。そうすることで、自身が将来的に高次医療機関で働く際にも、相手の立場がわかる医師となる。

5.間接的に地域医療に携わることだって、地域医療である。general mindを持った臓器別専門医になることも、地域の中核病院で働く上で大切で、そのような先輩がいてくれることで、後輩たちが困ったときに助けてあげられる立場になる。

 このように話をしました。以前、新潟県の初期臨床研修病院の研修責任者向けに話をさせていただいたり、大分の病院で地域で働く医師のモデルを考えたり、島根で行われたへき地離島救急医療学会での講演などで、それぞれの地域を俯瞰的に考える機会が多かったです。そして、金子先生のRIJ(rurality index for Japan)を見ながら、google mapとにらめっこして、今回も講演が始まる前に早朝の飛行機で現地入りして熊本の中で一番のへき地尺度となる天草まで車を走らせながら、病院がどんなところになるのか、どんな役割なのかと地域を見て回ってました。現地で見えることと、へき地尺度でわかることを重ねるとこれもまた面白い。RIJ的には、熊本は陸続きの離島がほとんどで、全国的にはへき地度合いはそこまでremoteにはならない。逆に、ruralではあるけど、抱える人口がそれなりにいるため、一番提供する医療についても難しい。そのような県でもあります。となると、県全体で育てていかないといけない医師は、上の中でも、ジェネラルマインドを持った臓器別専門医を育てる必要度が高いこともわかります。熊本の自治医大の先生方が熊本の中でより先鋭的に進めていくのはこの領域だと思います。なんとなく、総合診療的なこともやらされているではなく、こういうピースになることで臓器別専門医に進んでも地域で役に立つ(周囲の医療者からも必要とされる)ようになると方針付けが出来ればいいなと思いました。これって、自治医大の中でも、県によって特性が異なることは今までも指摘があり、よく上の先生たちが「地域医療はまとめることができないんだよ。それぞれことなるからさ。」っておっしゃってましたが、まさに、RIJを使えば、どのようなニーズがあるのかより明確に見えて、同じ自治医大卒でも、どのような義務年限を過ごしながらトレーニングをしていくのがよいかというプログラム設計にも使えるような気がします。

 それと同時に各大学(県)が地域枠医師を今増やしていますが、ここと自治医大との違いについても少しずつ理解が深まりました。ほとんどの地域枠医師は、結局のところ、いわゆる地方国立大学の医局に属して、その専攻医プログラム中に地域の病院で勤務をするというところがほとんどです。これでは、家庭医や総合診療医は増えないですよね。そもそも臓器別専門医の集団である医局に属しているため。そうすると派遣先の地域の病院であってもミスマッチが起こると若い先生たちにとっては苦痛でしかないかもしれません。逆に医局の強みとしてしっかり臓器別については指導する。また、研究などについてもサポートする。だからこそ、地域枠の特性を活かして、地域に出るときは総合診療医として搬送する側の気持ちがわかるようになって帰ってこい。こういう体制にしないと、ただその県に医師を抱え込んだだけということになり、結局地域の病院にとって医師が増えない。医療が充足しないというジレンマは解消されないと思いました。ここに気付いて、一緒にやってくれる(声を挙げてくれる教授がいればいいのですが・・・笑)先にやったもん勝ちで、優秀な医師が残ると思うのですけどね・・・地域との連携も強くなり、紹介患者も増えると思うのですが。(医療の集約化の効率化)

 こう言えるようになったのも、自分自身が17年医師をしてきて知識と経験が積み上げられて結果を出しているから言えるのだと今回思いました。

自分自身は、大学にロールモデルもいなければ、相談相手もいなかった。将来「地域で役に立つ医師になりたい」という目標はあっても、何科になればいいのか、何を学べばいいのかすらわからなかったのでいろんな人に聞いてアドバイスをもらいながら、自分なりに地元のニーズはこれだろうと考えて、それを満たすためには何を学ぶべきか?と考えて、関東に行きまずは救急を学びました。そして、指導者のいるへき地での総合診療。そして、海外のプログラムも見て比較したいと思って、改めて日本の離島とオーストラリア。こうやって12年を費やしての今がある。振り返るとあっという間だったし、結果的には無駄なことは何もなく、どのときでも,どの場所でも経験したこと学んだことは今に活きている。そのときの経験をpositiveに捉えるかどうかでその後が変わると思います。

 義務年限中の若い先生にしっかり伝わればそれで満足!と思っていましたが、終わった後に、大先輩である先生方からも

「いやー、まさにその通りだよ!教員の立場的には言えない(自分からは)んだけど、そう思っている!代わりに言ってくれてありがとう!」

 「一回り下の先生が、自分と同じようなマインドで地域で働く救急医というニッチなことをやってくれていてうれしい。いままでも、そういう医師を増やしたいと活動していたけど、モチベーションを維持出来たよ。また頑張れる!」

 とうれしいお言葉をいただきました。継続は力なりではないですが、ニッチな世界ですが信念を持ってやり続けて少しずつ繋がってきていることを実感しています。

 私にとって一回り下の先生たちというと今初期研修から専攻医の先生たちです。北海道で繋がった子たちや千葉に来てすぐの子。また、このブログを通じて学会などで声をかけてくださった子たち。その子たちが少しでも「地域で働く救急医」または「救急に自信を持った総合診療医」として

rural GP

です。と胸を張って言えるような道を作っていきたいです。そして、私ではなく,彼らを見て今の医学生たちが「ああいう先生になりたい!」と思えるようになっていければいいなと。

自分はそろそろ応援する側に片足突っ込んできている。若い先生たちをサポート出来るようにシステム作りもしていかないといけないなと思うことが増えてきました。

不知火の図書館。TSUTAYAが建設運営をサポートしていて、子供のための絵本スペースもとてもきれいでした。スタバもあって、こんな地方の活性化いいなと思いました。

 

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