訪問患者様の看取りがありました。私がこの病院で働き始めてすぐに関わり始めた患者様。他の遠方の診療所に通院中だったのですが、たまたま休診日に苦しくなり当院へ受診されました。その曜日がたまたま私が救急対応の日でした。入院加療が必要ということで、当日入院。それから、約3年半年。HOT(自宅での酸素療法)を導入したこともあり、その後は毎月外来でお目にかかることとなりました。いつも笑顔で、「せんせー(先生)よ、はぁ、もう悪くなったら、口の管(気管挿管)とかはしなくていい。穏やかにいかせてくれー」と話をされていました。
この3年半の間に入院を繰り返すこともありました。台風の停電で、自宅のHOTが使えないときの緊急入院もありました。
一方で、私自身の子供が生まれるにあたり、お休みをいただいたときや、娘が扁桃腺の手術をするために、他の子供の世話のために休みをとるときなどは「子供とかーちゃんは大切にせんとな。」「娘さんは大丈夫かい?」と逆に心配してくださりました。
外来では、そんな自分の子供の写真をお見せしたりして、まるで自分の祖父のような感じのお付き合いでもありました。
この春から、外来での待ち合いでの時間ですら、少ししんどくなってきたということで
「家に診察に行きましょうか?」
と、訪問診療が始まりました。この地域の住所、距離感だいぶ覚えていたつもりでしたが、初めて伺った時にびっくりしました。
「え?! こんな遠いところから毎月来て下さっていたの?!」
勝浦は海だけでなく山もあり、病院まで山道を30分ほど行くところでした。とてものどかで静か。
ご自宅もとても素敵。
耳の遠い奥様と二人暮らし。
ご自宅で拝見するお顔はとても素敵でした。病院で伺う10分と全然違う。とても穏やかな笑顔。ご自宅での過ごし方をうかがったり。
2ヶ月前に調子を崩されて、いよいよ危ないかもと判断し、息子さんにも御連絡をしたのですが、入院をせず自宅で診ることになり、持ちこたえ、先月の定期訪問時は、まだいつもの笑顔。
2年前に赤ちゃんだった自分の子供の写真をお見せしながら、「おー、あのときの子供? おおきくなったんだねー。はやいなー」
なんて話もしていました。「ほんと元気になって良かった。また、来月来ますよ。次はお盆が明けたらですね。」「おー、せんせー、まってるよー」
奥様から、
「気付いたら、呼吸してなかったんですよ。ほんといい顔してますよね。先生ありがとうございます。」
「あの人、いつも先生の話してたんですよ。次はいつだっけ?って。」
「最後まで、みなさんによくしてもらって本当に幸せな人です。家でよかったです。」
「今の状況だと、入院してたら会えなかったでしょう?家でやきもきしながらも私もずっと側に入れて幸せでした。」
ご本人はとても素敵な笑顔で眠っておられました。奥様と二人でお話ししているときは、私も落ち着いて思い出話をしていて、ご自宅を出ようとしたときに、他の御家族とお会いしたので、ご挨拶をしようと話し始めたら、自分の感情が抑えられませんでした。
こういうときに医師は泣いてはいけないという人もいるのでしょうけど、私はやっぱりダメです。
救急医だったときは、長い時間軸の中で接することのない方の「死」をたくさん診てきました。
医師7年目から定期外来をやりながら、訪問などをやったりしています。まだ経験が少ないからなのかもしれませんが、長いお付き合いのある患者さんとのお別れはいつも感情があふれてしまい、御家族の前でも泣いてしまいます。
とても素敵な景色。とても素敵な気候。こんな日にお別れができて良かったです。ありがとうございました。
